加納が読んだ本たち
罪と罰〈上〉 (岩波文庫) | 罪と罰〈中〉 (岩波文庫) | 罪と罰〈下〉 (岩波文庫) |
《ドストエフスキーを読もう》(マークスの山、p.228)
ドストエフスキーは有名なのであえてあらすじがどうのと解説しません。著作は多いのですが、私が読んだのは「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」「悪霊」の3つだけです。中でも高村作品に関連が強いのは「罪と罰」でしょう。吾妻のあだ名の元になったポルフィーリィが出てきますし、「照柿」は現代版「罪と罰」とも言われているので、高村ファン必読の書ですね。いずれ「白痴」なども読んでみたいです。
ブリタニキュス ベレニス (岩波文庫) |
朝、でがけに義兄の書棚から失敬してきたカビ臭い文庫本はラシーヌの詩劇だった。(照柿、p.265)
ラシーヌはフランス人作家なんですが、これを原書で読めという加納も、往生しつつも読んだ合田も普通の大学生じゃないと思う。
ブリタニキュスは皇帝がある女性を愛し、彼女の恋人に嫉妬したあまり毒殺してしまうというあらすじらしいですが(読んでないので知りませ~ん)、合田は達夫と美保子に嫉妬する自分と重ね合わせたようです。が。これ、どう考えても合田と貴代子に嫉妬した加納が奸計を巡らせる方へ取ってしまいます。
神曲 地獄篇 | 神曲 煉獄篇 | 神曲 天国篇 | |
そういえば、この義兄に尻を叩かれて、貴代子と一緒にダンテの『神曲』を読んだのは、二十歳のころだったか。(照柿、p.254)
説明不要ですね。暗い森をさまよう加納を導くヴェルギリウスを合田と考えるのか、永遠の淑女ベアトリーチェが合田なのか。
「神曲」はいくつかの訳があり、私が読んだのは山川丙三郎訳の岩波文庫ですが、「照柿」で引用されているのはどうやら平川祐弘訳のようです。上の画像は平川訳の河出文庫のものです。
あくまで山川訳を読んだ私の感想ですが、さすがに永く読み継がれるだけに、圧巻です。そもそも私は詩を読む習慣がないのですが、まったく退屈せずに読めました。小まめに巻末の註を参照するより、まずはざっくり全体を味わい、二度目、三度目で深い理解を求める読み方が良いと個人的には思います。
北越雪譜 (ワイド版岩波文庫) |
私も『北越雪譜』は好きですが、根来さんは子供のように嬉しそうでした(レディ・ジョーカー、下巻p.346~347)
高村さんを知らなければ絶対に出会わなかった本です。文語体ですが、非常に軽妙な文章で雪国の生活などが活き活きと描かれ、楽しく読みました。根来さんが初版の原画を見つけて喜んでいた、というくだりを理解しようと思うと、初版が出版されるまでのいきさつが巻末に記載されている岩波のものが良いと思います。
エクリ 1 |
相似形のような兄から借りてきて、夫の食事もつくらずに暗い台所のすみで読み耽っていたラカン。(太陽を曳く馬、下巻p.298)
精神医学、心理学、言語学・・・人間理解の書。有名ですが、日本語訳があまりに破綻しており、内容以前に読むのは難解です。対象a、ドストエフスキー、禅など、高村薫さん、そして太陽を曳く馬と何より関連の高い本ですが、これを読むにはかなりの根性が要ります。これもラシーヌ同様フランス語なので加納は原書を読んだ可能性も高そうです。
*オマケ
「ローマ・ある都市形成の歴史」
幻の七係シリーズの第2話、放火(アカ)の中で「読書狂の義兄に『読め』と押し付けられた」合田が読んでいるのですが、Google、amazon、国会図書館、いずれも検索にヒットしませんでした。何せフランス文学を原書で読む2人なんで、もしかしたら日本にはない本なのかもしれません・・・。
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